爪の疾患(陥入爪、巻き爪、爪囲炎)|付属器疾患⑤

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回はの疾患(陥入爪、巻き爪、爪囲炎)について解説します。

伊藤泰介
浜松医科大学付属病院皮膚科

 

 

Minimum Essentials

1爪周囲の皮膚組織に爪が陥入し、炎症、疼痛を引き起こした状態である。

2爪周囲の皮膚組織が発赤、腫脹し爪組織が陥入している。巻き爪を伴うことも多い。

3治療として爪と皮膚組織が直接接触することを回避し、感染症対策を行う。

4疼痛や発赤は2〜3週間程度で軽快するが、爪の変形の改善には時間がかかる。

 

陥入爪、巻き爪とは

定義・概念

陥入爪とは、爪甲(そうこう)の辺縁が周囲の皮膚組織に持続的に陥入し、炎症をきたした状態である。

 

原因・病態

爪が周囲皮膚に陥入する原因の1つは、巻き爪である。その原因として、爪白癬、窮屈な靴、外反母趾などがある。

 

また巻き爪がなくても、深爪や外傷による爪の伸長障害、肥満などによって食い込むことがある。

 

また近年、肺癌、膵癌、直腸癌に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(ゲフィチニブ、エルロチニブ)や抗EGFR抗体(セツキシマブ)の使用中、爪周囲に肉芽腫が形成されることによる陥入爪の症例がみられる(「化学療法に伴う皮膚障害」参照)。

 

糖尿病患者では蜂窩織炎を続発し致命的になる場合があり、積極的な介入が必要である。

 

 

目次に戻る

診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

爪周囲の皮膚組織が発赤、腫脹し疼痛を伴っている。慢性的な刺激により肉芽組織の形成をきたしたり、細菌感染や爪囲炎を伴ったりする。巻き爪では、爪が弯曲し周囲の腫脹した肉芽に食い込んだ状態となる。

 

検査

感染を伴っていると考えられる場合には細菌培養検査を行い、適切な抗菌薬を選択投与する。

 

 

目次に戻る

治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

外科的な方法と保存的な方法がある。

 

外科的な方法としては、フェノール法がある1)。伝達麻酔後、爪の側縁を縦に2〜3mmの幅で剝離し引き抜いたあと、液状フェノールを爪母、爪床に外用して爪の再生を阻害しておく方法である。

 

保存的な方法としてはガター法がある2)。爪が皮膚に当たらないようチューブを被せる方法で、適応は炎症を伴うすべての症例である。

 

局所麻酔は痛みの程度に応じて適宜行う。介助についた看護師が、陥入した爪の爪外側縁をモスキート鉗子などで持ち上げておき、縦切した細めの吸引カテーテルなどを医師が爪の長さに合わせて挿入し、医療用アロンアルファ®で接着・固定するとスムーズに処置が行える(図1)。

チューブは1〜2週間ごとに適宜交換する。アクリル人工爪を併用する方法もある。

 

図1ガター法を施行した陥入爪症例

ガター法を施行した陥入爪症例

 

コットンパッキン法も良い。この場合、吸引カテーテルの代わりに生理食塩水を含んだ綿球をさばいて細長くし、爪外側縁に挿入する。

 

巻き爪の巻きが高度の場合は、ワイヤーを用いて爪を伸ばすようにする。爪の先端に形状記憶性のワイヤーを通したり、クリップをかけたりする方法がある。

 

合併症とその治療

陥入爪の合併症には感染症が多い。糖尿病などを合併していると、蜂窩織炎など重度の感染症を引き起こすこともある。

 

また、陥入爪の原因としての爪白癬もあげられる。陥入爪の処置とともに爪白癬の治療を併せて行う必要がある。

 

治療経過・期間の見通しと予後

1. 患部への加重が続くと長期化する。

2. 症状に合わせて治療法は変更される。

3. 爪白癬や窮屈な靴を履くなどの原因が続けば再発しやすい。

4. 経過良好でも、完治に1〜2ヵ月は必要とする。

 

看護の役割

治療における看護

糖尿病などのフットケアの1つとして重要なケア対象である。患者に対して適切な爪切りの方法を指導する。

 

外来での爪処置では、足浴後の爪がやわらかくなっている間に行うと良い。

 

厚くてかたい爪は、やすりで薄く削ってから切ったり、一度に切ろうとせず外来ごとに少しずつ切るなどする。

 

また、処置をしながら患者に正しい爪の切り方を説明する。爪の先端の白い部分が1mmほど残る程度に、まっすぐに切ることが大切である。

 

フォローアップ(退院時指導、日常生活)

患者に対して、足や爪を日常から観察するよう促す必要がある。

 

糖尿病患者で視力や感覚が低下している場合には、家人に見てもらうように指導する。

 

外来ごとに看護サイドからもフットケアを行い、適切に爪が処置されているか、巻き爪になっていないか、爪白癬や足白癬がないかなど観察を行う。

 

 

目次に戻る

引用・参考文献

1)高山かおる:陥入爪、爪の変形.MB Derma 188:33-40,2012

2)田村敦志:陥入爪に対するフェノール法を中心とした観血的治療法の意義.MB Derma 184:100-107,2011

 


 

本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

 

[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

SNSシェア

看護ケアトップへ