ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)|細菌感染症②
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回はブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)について解説します。
池田政身
高松赤十字病院皮膚科
Minimum Essentials
1黄色ブドウ球菌の産生する表皮剝脱毒素(ET)により表皮剝離、びらんを生じる。近年は起炎菌としてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が増加している。
2乳幼児に好発し、発熱および全身に熱傷様の表皮剝離、びらんが拡大する。
3補液などの全身管理と、感受性のある抗菌薬の全身投与を行う。
41週間程度で潮紅は退色し、大きな鱗屑となり軽快する。
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(Staphylococcal scalded skin syndrome:SSSS)とは
定義・概念
発熱および全身に熱傷様の表皮剝離、びらんの拡大する疾患で、乳幼児に好発するが、時に高齢者でも発症する。
原因・病態
黄色ブドウ球菌が鼻咽頭などに感染し、表皮剝脱毒素(ET)を産出し、血中に入ったETが表皮細胞の結合(デスモゾーム)を切って表皮細胞がバラバラになり、水疱、びらんが生じる。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
発熱、全身倦怠感、食欲不振、不機嫌などの全身症状とともに、口囲、鼻孔周囲の潮紅と眼脂を生じる(図1)。
さらに腋窩や頸部、外陰部などに接触痛を伴う潮紅を生じ、その後全身の皮膚が潮紅し、水疱、びらんを生じる1)。
検査
血液検査で白血球数やCRP値の上昇がみられる。確定診断には鼻咽頭などからの黄色ブドウ球菌の培養を行う。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
輸液などの全身管理を行い、黄色ブドウ球菌に感受性のあるβ-ラクタム系薬の内服ないし点滴静注を行う2)。
びらんにはアズノール®軟膏や亜鉛華軟膏などを塗布する。
合併症とその治療法
脱水症に対しては輸液管理を行う。高齢者では腎機能低下に注意する。
治療経過・期間の見通しと予後
乳幼児では1週間ほどで解熱し、皮疹も軽快し予後は良好である。一方、高齢者では予後が悪い場合がある。
看護の役割
治療における看護
十分な栄養と睡眠をとるよう指導し、配慮する。
発熱時には解熱薬を投与し、脱水を起こさないよう十分に水分摂取を行うよう指導する。皮膚の状態を観察し、びらんなどのある場合は適切な外用療法を行う。
急性期は入浴やシャワーは禁止するが、回復期にはシャワーを浴び、皮膚の清潔を保つよう指導する。
フォローアップ
体力の回復を図り、食事や睡眠を十分とるよう指導する。
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引用・参考文献
1) 池田政身:ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS).日本臨牀 別冊 感染症症候群(第2版)下,p.510-513,日本臨牀社,東京,2013
2) 井上多恵:伝染性膿痂疹,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS).逃げない!攻める!皮膚科救急テキスト(出光俊郎編),p.66-69,文光堂,東京,2017
本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂