吸啜のメカニズム
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は吸啜(きゅうてつ)のメカニズムについて解説します。
立岡弓子
滋賀医科大学医学部看護学科教授
哺乳とは
新生児の哺乳は、吸着・吸啜・嚥下の一連の過程で成り立っている。
新生児の口唇や鼻に乳頭が触れると、探索反射が起こり乳頭を探し、捕捉反射により口を大きく開けて乳頭~乳房(吸い口)をくわえる(図1)。このように、口唇と舌で吸い口を捉えて維持することを吸着という。
吸着後、吸啜反射により舌の上下運動が起こり、乳汁が乳管から口腔内へ流れ込むことを吸啜という。
口腔内へ流れてきた乳汁が、咽頭を通り食道へ流れ込むことを嚥下といい、これは嚥下反射によって起こる。新生児の喉頭は成人に比べて高い位置にあり、喉頭蓋は軟口蓋の直下にあるため、嚥下時に乳汁は気管に入らず咽頭から食道のほうに流れるようになっている。
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吸啜のメカニズム
1吸着後、口唇と舌は吸い口に密着し、口腔内は陰圧に保たれる(baseline vacuum -64 ± 45mmHg)。この陰圧(吸引圧)と、舌の支えにより乳房は保持される。このとき、舌は上のほうに位置している(図2-a)。
2下顎が下がり、舌の後方と軟口蓋が下へ下がりはじめ、同時に吸引圧も大きくなる。乳管は拡張し、乳汁が流れ始める(図2-b)
3舌の後方の位置が最も下がったとき、吸引圧は最大となり(peak vacuum -145 ± 58mmHg)、乳汁が口腔内へ流れ込む。(図2-c)。
4舌の後方はやや上昇し、吸引圧は低下する。この時口腔内の乳汁は軟口蓋の下を流れる(図2-d)。
5舌と軟口蓋はもとの位置に戻り、乳汁は咽頭を通り食道へ流れ込む。吸引圧はもとの陰圧となる(図2-a)。
新生児の舌と吸引
・ 舌は蠕動運動をせず、舌の後方を上下に動かすことで口腔内の吸引圧が変化する。
・ 吸引圧が上がると、口腔内に含まれている乳頭の乳管は拡張し、射乳反射と相まって乳汁が口腔内に流れこむ。
・ 乳頭は硬口蓋と軟口蓋の連結部には到達せず、舌によって潰されない。
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引用・参考文献
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版