妊娠中期の胎児の成長と能力
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は妊娠中期の胎児の成長と能力について解説します。
立岡和弘
静岡市立清水病院産婦人科長
胎児の形態スクリーニングと発育の測定
妊婦健診では、超音波検査で形態スクリーニングを行うとともに、児の発育を測定する。
超音波検査では、大横径(BPD)、大腿骨長(FL)、腹部周囲長(AC)の3つのパラメーターを測定し、胎児推定体重を求める(図1)。
<太字はよく使用される指標>
BPD:biparietal diameter 大横径
APTD:antero-posterior trunk diameter 腹囲前後径
TTD:transverse trunk diameter 腹囲横径
FL:femur length 大腿骨長
AC:abdominal circumference 腹部周囲長
FOD:formtal occipital diameter 頭蓋前後径
大横径(BPD)
児頭の大横径〔biparietal diameter:BPD(cm)〕は透明中隔と四丘体槽の観察できる高さで、エコーのプローべに近い頭蓋骨の外側から遠位の頭蓋骨の内側を測定する(図2)。
BPD値の妊娠週数に対する回帰曲線は図3のとおり。
Meanは平均、Mean±1.5SDは正常範囲を示す。
腹部周囲長(AC)
腹部周囲長〔abdominal circumference:AC(cm)〕の測定は、大動脈を描出後にこれに直交する胎児腹部の断面を出し、胃泡、臍帯静脈をみる断面で、腹囲前後径〔antero-posterior trunk diameter:APTD(cm) 〕と腹囲横径〔transverse trunk diameter:TTD (cm)〕を測定する(図4)。いずれも外側縁までを測定する。
AC(cm)2=APTD(cm)×TTD(cm)÷0.089で計算される。
大腿骨長(FL)
大腿骨長〔femur length:FL(cm)〕は大腿骨の長軸で両骨端の中央部分の距離を測定する(図5)。
FL値の妊娠週数に対する回帰曲線は図6のとおり。
Meanは平均、Mean±1.5SDは正常範囲を示す。
胎児推定体重
胎児の推定体重(estimated fetal body weight:EFBW)は、次の式で求められる。
EFBW(g)=1.07×BPD(cm)3+0.3×AC(cm)2×FL(cm)
超音波機器に内蔵の推定体重計算機(図7)、胎児推定体重の妊娠週数に対する回帰曲線(図8)は下記のとおり。
Meanは平均、Mean±1.5SDは正常範囲を示す。
Mean−1.5SD以下はSFD(smallfordate infant)で子宮内発育遅滞を示す。
Mean+1.5SD以上はLFD(largefordate infant)で週数に比して大きい胎児を示す。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版