全身麻酔からの覚醒
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回は全身麻酔からの覚醒について解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
術後管理に大きく影響するから、まずは麻酔について知っておこうね!
全身麻酔とは?
麻酔…苦手ですー
でも、消化器外科では多くの手術で全身麻酔をするし、手術を行ううえでもとても重要な項目ではあるから、きちんと勉強しておこうね。
❶麻酔の種類
局所麻酔や伝達麻酔は手術を行う部分にのみ行いますが、全身麻酔は全身に麻酔をかけるため、意識が消失します。
意識を消失した状態では、患者が異常を訴えることができないため、麻酔科医が全身管理を行います。
❷麻酔の目的
麻酔の目的は表1の3つです。
鎮静 |
精神的な苦痛をなくすために寝てもらう (なにをしているかなんて覚えていたくないでしょ?金縛り状態で何時間も耐えるなんて拷問でしょ?) |
筋弛緩 |
患者が動かないようにする (腹部手術の場合は腹筋の力を抜くことで、小さな創でも大きく開きやすくする) |
鎮痛 |
痛み(身体的な苦痛)をなくす |
❸全身麻酔の流れ
1. 手術室入室後、背中から硬膜外麻酔を実施
2. 確保した静脈ルートより鎮静薬を投入
3. 確保した静脈ルートより筋弛緩薬を投与
4. 筋弛緩が確認できたら、気管挿管し、人工呼吸器を作動
5. 人工呼吸導入後、吸入麻酔薬や静脈麻酔薬を持続的に投与
昔は手術室に入室する前に前投薬が行われていた記憶があるけど…
いまでも行っている施設はあると思うよ。
でも、筋肉注射とかで余分な痛みを与えることになるから、必要性があまり高くないと判断されて最近は減ってきているよね。
前投薬なしなら手術室に歩いて入室できるというメリットがあるしね。
ただ、理解度が低い患者さんや不安が強い子どもの患者さんには医師の判断で使用することもあるよ。
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全身麻酔後に注意が必要なポイント
❶覚醒の状態
術後、麻酔からの覚醒が十分でないことがあるので、麻酔から覚醒できているかを確認しましょう。
自発呼吸が10回/分以上で、開眼や離握手などの簡単な従命が可能なら全覚醒と判断します。
❷術後悪心・嘔吐(PONV)
人によって覚醒後、一時的に悪心・嘔吐が出現することがあります。
女性、非喫煙者、PONVや乗り物酔いの既往、術後のオピオイド使用などがリスク因子とされています。
麻酔の全体的なイメージは「強力に酔っ払わせて死なない程度に痛みもなにもわからない状態にして手術する」という感じ。 つまり、PONVはお酒でいうところの「二日酔い」。 だから、お酒と同じで残る人もいれば残らない人もいるんだよ。
❸術後嗄声
ほとんどは声帯への器械的刺激によって起こった一過性の声帯機能不全なので、1週間くらいで軽快することが多いです。
❹疼痛
術後はさまざまな方法で鎮痛が図られているはずです。
点滴や硬膜外鎮痛法など、どんな方法が使われているのか、どんな薬がいつ使われたのかなど、よく確認しましょう。
くわしくは疼痛管理のページを参照。
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【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂