胸膜疾患
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は胸膜疾患について解説します。
稲垣由美子
さいたま赤十字病院10F西病棟看護主任
胸膜とは?
肺は胸膜に覆われており、胸膜は臓側胸膜と壁側胸膜からなります(図1)。
臓側胸膜と壁側胸膜でつくられた空間を胸膜腔(胸腔)といいます。
胸膜腔内は大気圧と比較して、常に陰圧(−5~−8cmH2O)に保たれています。このため、肺は胸郭の動きに合わせて膨らむことができます。
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患者さんはどんな状態?
胸膜への刺激による乾性咳嗽、胸痛、胸部の違和感・圧迫感、原因疾患による症状、胸水貯留などによる呼吸困難などが生じます。
代表的なものに、膿胸、胸膜炎、気胸、胸膜中皮腫があります(図2)。
呼吸状態の悪化や痛みが出現し、時には命にかかわる重篤な状態になることをおさえておきましょう(図3)。
胸水
正常でも胸膜腔には約10~20mLの少量の胸水(生理的胸水)が存在し、肺がスムーズに膨らんだり縮んだりするよう、潤滑液の役割をしています。
胸水は壁側胸膜から生産され、臓側胸膜に吸収されて、一定の量を保っています。何らかの原因により生産と吸収のバランスが崩れると、胸水が過剰に貯留します(図4)。
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どんな検査をして診断する?
胸水貯留の原因は多岐にわたります。原因疾患を鑑別するために、胸腔穿刺により採取した胸水の性状を調べます。
胸水の肉眼的所見・性状により、血胸や乳び胸、膿胸が診断できます。
胸水検査の結果により、胸膜炎によって生じる炎症性の滲出性胸水と、非炎症性の漏出性胸水に分けられます。
胸水だけで原因疾患が特定できない場合は、胸膜生検(経皮的・胸腔鏡下)を行います。
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看護師は何に注意する?
胸膜疾患では、肺が空気で満たされ、胸壁を押すように膨らんだときに痛みを感じたり、咳嗽を催したりすることがあります。
胸腔穿刺のときは、体位を保てるよう援助し、患者さんの顔色や症状(胸痛、呼吸困難、咳嗽、冷感、チアノーゼ)、血圧、脈拍、酸素飽和度などを注意深く観察します。また、排液量・性状を観察し、胸腔穿刺後は、穿刺部から出血や滲出液がないかを確認します。
胸腔穿刺の合併症として、気胸、出血、感染症、脾臓や肝臓の損傷などがあります。また、数週間から数か月溜まっていた大量の胸水を急激に排出した場合には、ショックや再膨張性肺水腫が起こることがあります。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社