肺炎

 

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は肺炎について解説します。

 

 

平澤真実
さいたま赤十字病院ICU看護主任
慢性呼吸器疾患看護認定看護師

 

 

肺炎とは?

肺炎はわが国の令和元(2019)年の死因順位で第5位です(図1)。平成29(2017)年に誤嚥性肺炎が独立して集計されるようになったため、肺炎は見かけ上減少していますが、臨床の場ではよくみかける疾患です。

 

図1 主な死因別にみた死亡率(人口 10 万対)の年次推移

主な死因別にみた死亡率(人口 10 万対)の年次推移

厚生労働省:令和元年(2019年)人口動態統計より作成(2020.12.01アクセス)

 

特に65歳以上の高齢者では、肺炎の発症率や死亡率が急激に高くなります。

 

肺炎は細菌感染による細菌性肺炎と細菌以外の原因微生物の感染による非定型肺炎とに大別されます。

 

疾患の原因となる細菌・ウイルスによって治療薬が変わります。よって原因の同定をしっかり行うことが大切です。

 

 

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患者さんはどんな状態?

肺炎では、咳嗽、呼吸困難、胸痛、膿性痰などの呼吸器症状のほか、呼吸数・脈拍の増加、発熱、悪寒、倦怠感といった全身症状がみられます。

 

重篤化すると呼吸不全や敗血症となり命にかかわるため、特徴的な身体所見をしっかりと理解し、適切な看護が行えるようにしましょう。

 

 

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どんな検査をして診断する?

打診では濁音、触診では声音振盪の増強が、聴診では水泡音(coarse crackles)や捻髪音(fine crackles)が聴取されます。

 

memo:声音振盪

声の響きが胸壁まで伝わること。

 

X線検査では浸潤影がみられ、血液検査では白血球数(WBC)、C反応性タンパク(CRP)、赤沈(ESR)、プロカルシトニン(PCT)の増加がみられます。

 

 

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どんな治療を行う?

肺炎は発症の場によって市中肺炎(CAP;community-acquired pneumonia)院内肺炎(HAP;hospital-acquired pneumonia)医療・介護関連肺炎(NHCAP;nursing and healthcare-associated pneumonia)に分けられます(図2)。これが治療方針を決めるうえでの基本となります。

 

図2 肺炎の分類

 肺炎の分類

 

memo:A-DROP

Age:男性70歳以上、女性75歳以上
Dehydration:BUN21mg/dL以上または脱水あり
Respiration:SpO290%以下(PaO260Torr以下)
Orientation:意識障害あり
Pressure:血圧(収縮期)90mmHg 以下
※該当なしは軽症、1~2項目該当で中等症、3項目該当で重症、4項目以上で超重症
※ショックがあれば、 1 項目のみでも超重症

memo:I-ROAD

Immunodeficiency:悪性腫瘍または免疫不全状態
Respiration:SpO290%以下(PaO260Torr以下)
Orientation:意識障害あり
Age:男性70歳以上、女性75歳以上
Dehydration:乏尿または脱水
※3項目以上該当で重症、2項目以下で
 ・CRP≧20mg/dL
 ・胸部X線写真陰影の拡がりが一側肺の2/3以上
  に当てはまる場合は中等症、当てはまらない場合は軽症

 

 

 

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看護師は何に注意する?

肺炎の分類や原因菌、病原微生物によって治療方針が異なります。またそれぞれ特徴的な身体所見もあるので、それぞれの病態理解がとても大切です。

 

肺炎にかぎらず、疾患によって感染経路はさまざまです(表1)。原因となる細菌・ウイルスによっては、飛沫・接触感染を引き起こす可能性があります。

 

表1 主な感染経路と代表的な疾患

主な感染経路と代表的な疾患

★1 MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus
★2 VRE(vancomycin-resistant enterococci)
★3 RS(respiratory syncytial)

 

看護師が媒介となってほかの患者さんにうつしてしまわないよう、疾患別の感染経路と予防策(図3)をしっかりと理解することが大切です。

 

図3 標準予防策(スタンダードプリコーション)

標準予防策(スタンダードプリコーション)

 

個人防護具(PPE)の使用

PPEを着用する手順は、
 1)手指衛生2)エプロン・ガウン3)マスク4)ゴーグル・フェイスシールド5)手袋
の順番で装着します。

 

手袋は清潔な状態を保持するため、最後に着用します。

 

PPEを外す手順は、
 1)手袋2)手指衛生3)ゴーグル・フェイスシールド4)手指衛生5)エプロン・ガウン6)手指衛生7)マスク8)手指衛生の順番で行います。汚染のひどいものから外すことを意識しましょう。

 

エプロン、ガウン

血液や体液、分泌物などで衣服が汚染される可能性がある場合、撥水性があり非浸透性のガウン、またはエプロンを着用します(図4図5)。

 

図4 ガウンの装着方法

ガウンの装着方法

 

図5 ガウンの脱ぎ方

ガウンの脱ぎ方

 

マスク、ゴーグル、フェイスシールド

目や鼻、口に血液や体液などが飛沫する可能性のあるケアを行う場合に、目や鼻、口の粘膜を保護するために装着します(図6図7図8)。

 

図6 サージカルマスクの装着方法

サージカルマスクの装着方法

 

図7 サージカルマスクの外し方

サージカルマスクの外し方

 

図8 ゴーグル、フェイスシールドの外し方

ゴーグル、フェイスシールドの外し方

 

装着する前と外した後には、手指衛生を行います。

 

手袋

血液や体液、分泌物や排泄物に触れるときや傷のある皮膚や粘膜に触れる直前、あるいは血液や体液、分泌物や排泄物で汚染された物品に触れる直前に手袋を装着します(図9)。

 

図9 手袋のつけ方

手袋のつけ方

 

使用後の手袋は、汚染されている外側の部分に触れないよう注意して外します(図10)。

 

図10 手袋の外し方

 手袋の外し方

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

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