非侵襲的陽圧換気(NPPV)とは?
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『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は非侵襲的陽圧換気(NPPV)について解説します。
勅使河原育美
さいたま赤十字病院ICU看護師
呼吸療法認定士
非侵襲的陽圧換気(NPPV)
非侵襲的陽圧換気(NPPV;non invasive positive pressure ventilation)は、気管挿管や気管切開を伴わない陽圧換気のことをいいます。
装着中も、離脱が容易というメリットがあります。
自発呼吸ができ、気道が確保されていることが前提の換気方法となります(表1、表2)。
日本呼吸器学会NPPVガイドライン作成委員会編:NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン 改訂第2版.南江堂,東京,2015:16.より作成
日本呼吸器学会NPPVガイドライン作成委員会編:NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン 改訂第2版.南江堂,東京,2015:20.より作成
NPPV開始によって呼吸状態が安定しない場合は、侵襲的な挿管管理に移行する可能性があります。
NPPVの主な適応疾患(表3)と適応注意・禁忌(表4)は以下のとおりです。
日本呼吸器学会NPPVガイドライン作成委員会編:NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン 改訂第2版.南江堂,東京,2015:17.より作成
日本呼吸器学会NPPVガイドライン作成委員会編:NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン 改訂第2版.南江堂,東京,2015:3.より作成
NPPVの画面の見かたは図1のとおりです。
IPAPとEPAPの解説は図2のとおりです。
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NPPVで使用するモード
さまざまなモードがありますが、臨床でよく使用するのは、1)CPAP(持続的気道陽圧)、2)S/T(spontaneous/ timed)モード(PSVモード+時間的強制圧換気)、3)AVAPS(average volume assured pressure support;平均1回換気量保障機能)の3種類です。
CPAP
吸気・呼気ともに一定の陽圧をかけるモードです。肺の膨らみを維持する効果があり、酸素化の改善目的で使用されます。
換気補助の効果はなく、自発呼吸があることが前提です。
自発呼吸が弱い、もしくは見られない場合はほかのモードに変更する必要があります。
換気補助の効果はないため、高二酸化炭素血症の患者さんへの改善効果は期待できません。
S/Tモード
自発呼吸があるときは、患者さんの吸気に合わせて設定した陽圧(IPAP)まで送気し、換気を補助してくれます。
自発呼吸時の吸気時間は、患者さんの呼吸パターンによって決定されます。
自発呼吸がない場合は、強制的に送気し換気を補助します。吸気から呼気への切り換わりのタイミングも、設定した吸気時間によります。
AVAPS
S/Tモードと同様、換気の補助を行いますが、ほかのモードと異なり、目標の1回換気量を供給します。
換気量の変化(肺や胸郭の変化)に対して、設定された1回換気量を補うようにIPAPのサポート圧を変動して換気を送気します。
1回換気量の目標値を維持するために、PSレベルを自動的に調整してくれます。
NPPV導入時のポイント
NPPVが継続できるかは、導入時が一番のポイントになります。
挿管下の人工呼吸器では、患者さんに鎮静薬を投与し、眠らせて人工呼吸器と同調させることが可能ですが、NPPVは患者さんの自発呼吸が不可欠であるため、患者さんの協力が必要となります。最初に不快感を与えてしまうと、その後も拒否が続き継続が困難となってしまう場合があります。患者さんは死を予感させる呼吸困難の中で、はじめて見るマスクや、人工呼吸器、アラームなどの騒音にパニックに陥りやすい状況だということを理解しましょう。
マスクを顔に当てる前に、患者さんの手に当てるなどして、「このように風が流れます」などと説明し、まずは患者さんに人工呼吸器から流れ出る風の圧力を体感してもらいましょう。それからマスクを装着します。いきなりマスクを固定するベルトを締めるのではなく、慣れてきたときに締めます。
マスクにはいろいろな種類と形があるため、患者さんの状態に合わせて使い分けることができます。患者さんに、マスクにはサイズや形がいろいろあり変更可能であることを、わかりやすい言葉で説明しましょう。
マスクの種類
自施設にあるマスクの種類とサイズを把握しておきましょう。
それぞれの種類のマスクのデメリットとメリットを理解し、患者さんに適したマスクを選択しましょう(図3、図4、図5)。
マスクのリークの調整
リークには意図的なリークと非意図的なリークの2種類があります。
意図的なリークは、マスクに開いている呼気排出孔からのリークで、V60ベンチレータではマスクの選択が合っていれば補正されます。
非意図的なリークには、マスク上部へのリーク、マスクから頬のリークがあります。やせていて頬がこけている人は、頬からリークしやすくなります。
マスクのリークは許容範囲60L/分以下をめやすに調整します(図6)。表5にリーク量のめやすの表を載せますが、リークが0になることがよいということではありません。必ずリークを残すように調整することが大切です。
マスクフィッティング
マスク選択におけるポイントは、さまざまな種類やサイズの中から患者さんに適したマスクを選択することです(表6)。
治療目的にあったマスクであり、かつ非同調や皮膚障害などのトラブルを起こさず患者さんが快適にNPPVを継続できることが重要です。
マスクによる皮膚障害
医療機器によって生じる皮膚障害を医療関連機器圧迫創傷(MDRPU;medical device related pressure ulcer)といいます。
慢性呼吸器疾患や循環器疾患患者さんなどでは特に、NPPV装着が長期に及ぶ場合もあり、マスクの圧迫により皮膚障害が起こるリスクが高くなります。
皮膚障害が起こりやすい場所を知り、皮膚障害は必ずできてしまうという意識をもって、こまめに観察を行う必要があります(図7)。
マスクからのリーク量を減らすためにマスクを強く押し付けて装着すると皮膚障害が起こりやすいため、注意しましょう(表7)。
MDRPU形成のハイリスク要因(表8)にあてはまるときは、より注意して皮膚の状態を観察し、MDRPUを予防するため、皮膚保護材の使用を検討します。
皮膚障害の予防方法
NPPVを装着するような患者さんは、低栄養や浮腫があり、皮膚が脆弱な人が多いため、マスクフィッティングがしっかりできていないと皮膚障害が発生します。皮膚障害を生じやすい部分をこまめに観察し、しっかりとマスクフィッティングをしましょう。
姿勢を調整し、マスクのずれを予防しましょう。また、蛇腹やアームの位置によっては、マスクが引っ張られることでずれが生じるため、蛇腹の位置やアームの位置の調整もしましょう。
マスクの汚れも皮膚障害の原因となるため、マスクが当たっている部分を清拭し、マスクに付着した皮脂や汚れも拭き取るようにしましょう。
皮膚障害予防のために皮膚保護材を貼付することもありますが、皮膚保護材の下で皮膚障害が生じている場合もあります。皮膚保護材が貼ってあるからといって安心するのではなく、定期的にはがして皮膚の状態を観察し、皮膚を清潔に保つため清拭を行いましょう。
皮膚障害の対処方法
皮膚障害が生じた場合、皮膚障害の種類にあった皮膚保護材を使用します。迷った場合は、皮膚・排泄ケア認定看護師に相談するのもよいでしょう。
口鼻マスクで皮膚障害が生じたら、その部分の圧迫が避けられる顔マスクに変更するなど、マスクの種類の変更を検討します。呼吸状態が安定しているなら、酸素マスクや、高流量鼻カニューレなどを使用し、マスクの圧迫を解除する時間をもつことができないか医師に相談しましょう。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社