シスプラチン+イリノテカン療法(化学療法のポイント)/肺がん
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、肺がん(肺癌)の患者さんに使用する抗がん剤「シスプラチン+イリノテカン療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。
第2話:『シスプラチン+イリノテカン療法(看護・ケアのポイント)/肺がん』
久保寿夫
(岡山大学病院 腫瘍センター)
〈目次〉
- シスプラチン+イリノテカン療法は肺がんの患者さんに行う抗がん剤治療
- シスプラチン+イリノテカン療法で使用する薬剤
- シスプラチン+イリノテカン療法のレジメン
- シスプラチン+イリノテカン療法(小細胞肺がん)で使用する薬剤の投与方法
- シスプラチン+イリノテカン療法の代表的な副作用
- シスプラチン+イリノテカン療法の治療成績
シスプラチン+イリノテカン療法は肺がんの患者さんに行う抗がん剤治療
シスプラチン+イリノテカン療法とは、肺がんのうち小細胞肺がん、非小細胞肺がんの患者さんのどちらに対しても、ファーストライン(初回化学療法)として用いられる治療レジメンの一つです。小細胞肺がんと非小細胞肺がんでは、シスプラチン(ランダ)の投与量が異なりますので、注意してください。
ここでは、小細胞肺がんに対する治療レジメンとして紹介します。
シスプラチン+イリノテカン療法で使用する薬剤
シスプラチン+イリノテカン療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。
表1シスプラチン+イリノテカン療法で使用する薬剤
シスプラチン+イリノテカン療法のレジメン
シスプラチン(ランダ)は1日目(Day 1)のみ、イリノテカン(カンプト)は1、8、15日目に投与します。16~28日目は休薬します(表2)。
表2シスプラチン+イリノテカン療法のレジメン
シスプラチン+イリノテカン療法(小細胞肺がん)で使用する薬剤の投与方法(表3)
表3シスプラチン+イリノテカン療法の投与方法(小細胞肺がんの場合)
シスプラチン+イリノテカン療法の代表的な副作用
シスプラチン(ランダ)は、嘔気や嘔吐、食欲不振などの頻度が、ほかの抗がん剤に比べて高い薬剤です。その他の副作用としては、腎機能障害や骨髄抑制、発熱性好中球減少症(FN)、聴力低下・難聴などがあります。
イリノテカン(カンプト)の副作用は、骨髄抑制や下痢、間質性肺炎などがあります。特に、UGT1A1*6やUGT1A1*28などのUGT1A1遺伝子多形を持つ場合は副作用が強くなるため、投与前にUGT1A1遺伝子多型の有無について調べておくことが望まれます。
シスプラチン+イリノテカン療法のポイントA
- シスプラチンは抗がん剤の中でも嘔気・嘔吐の王様。制吐対策をしっかりしよう!
シスプラチン+イリノテカン療法のポイントB
- シスプラチンによる腎機能障害には注意が必要。水分摂取をしっかり勧めよう!
シスプラチン+イリノテカン療法のポイントC
- イリノテカンによる下痢は注意が必要。UGT1A1の測定、忘れていませんか?
シスプラチン+イリノテカン療法の治療成績
小細胞肺がん(進展型)に対する治療成績は、無増悪生存期間が6.9ヶ月、全生存期間が12.8ヶ月,奏効率が84.4%でした。
また、Grade 3以上の好中球減少が65.3%、発熱が1.3%、Grade 3以上の下痢が16.0%で起こっています1)。
memoがんの治療成績でよくみる奏効率とは?
奏効率とは、治療によってすべての腫瘍が消失する「完全奏効(CR;complete response)」と、ある一定の割合以上に縮小する「部分奏効(PR;partial response)」の確率を合わせたものです。つまり、「奏効率=CR+PR」です。
例えば、奏効率80%の治療というのは、「80%の確率で腫瘍が縮小、もしくは消失する治療」ということになります。
また、最近、「病勢コントロール率」という言葉をよく耳にします。これは、奏効率に腫瘍が増大しない「不変(SD;stable disease)」の確率を合わせたものです。つまり、「病勢コントロール率=CR+PR+SD」です。
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[文 献]
[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
[執 筆]
久保寿夫
岡山大学病院 腫瘍センター
*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。
*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。